Ken Yamada - NIH - Dynamics from ECM

細胞外マトリクス (ECM) の権威であり fibronectin の発見者が講演に来た。Dominant negative 作用を持つ inhibitory peptide の開発や 3D マトリクスゲルによる培養によって、細胞運動、形態形成のダイナミクスを in vitro で解析している。
2D ゲルでの培養条件では fibroblast は比較的ランダムな運動をする。しかし、 3D マトリクスゲルでは比較的直線的な運動をすることが time lapse imaging とその解析によってわかった。
まず、 3D マトリクスゲルについて。平均 1.5 細胞くらいの厚みに細胞が重なるように高密度で細胞を培養し、ECM を発達させる。そののちに、界面活性剤処理によって細胞を洗い流して、3D マトリクスの骨格だけを残すようにする。そしてこの ECM の 3D ゲルで細胞を培養してやっている。
このとき、細胞移動の直線性の評価は次のようにしている。ある期間細胞運動を live imaging する。そして、細胞の始点と終点の距離を D とし、移動の全長を T とする。このとき D/T を計算してやって、1 に近くなればなるほど、細胞運動が直線的でランダムではない、という風に評価している。
Fibroblast の細胞運動を評価するためのひとつの指標として lamela の発達程度が考えられる。この lamela の形成には small G である Rac が関与していることが古典的に示されており、 Rac の発現レベルを 2D ゲルと 3D ゲルの培養条件で比較してやると、3D では Rac のレベルが下がっていることが示された。また、lamela の数も 3D では減っている。さらに siRNA knock down によって Rac を down regulate してやることによって細胞運動の直線性 (Directional cell migration/ directionality) が強められることも再現性よく確認された。
3D マトリクス内の ECM の形成は完全に細胞独自の machinary による。現時点では上述の直線的細胞運動を生みだすような ECM を人工的に作り出すことはできない。またこの ECM は fibronectin でないと機能せず collagen ではそういった傾向は見られないという。
また、別の話しになるが、salivary gland (唾腺) の発達は肺や腎臓のように branching morphogenesis という形態形成の形態をとる。上皮様の salivary gland と周辺間充織の相互作用によって branching が促されるという話しもあるのだが、branch の始まりである、組織の cleft 形成の過程において Fibronectin と TIMP3 が cleft で発現上昇していることが SAGE で確認された。
もっとびっくりしたのは salivary gland を Tripsin-EDTA 処理してばらばらにしてやったのち、培養してやると組織が再凝集し、budding を始め、branching morphogenesis 様の細胞の振る舞いが確認されていたこと。つまり上皮そのものの intrinsic な性質として形態形成を行いうることをこの実験結果は示唆している。
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