Genetic control of behavior in plant preference - Matsuo of Tokyo Metro. Univ

Ctenophora2005-07-10

JDRC7 報告続き。忘れないうちに。一番最後のセッションでの最後の話。いにしえの生物学と現代の分子生物学が手を結んでいるという感じで、とりにふさわしかった。動物学を学部で学んだ身としてはおもしろーい!という印象。
Drosophila melanogaster の近縁種で Drosophila sechellia と Drosophila simulans がいる。この D. sechellia は悪臭のする果物 Morinda citrifolia (google:image:morinda citrifolia) を好むけれど、simulans も melanogaster もこの匂いは嫌いらしい。sechellia と simulans は交配可能で繁殖可能な子を作れるくらいの近縁種。また sechellia と melanogaster も交配可能で、ただし次世代 F1 は不稔。
この種間の交配による原因遺伝子マッピング(positional cloning)によって、 sechellia の Morinda citrifolia を好む形質の原因遺伝子が単一の遺伝子座に決定された!その原因遺伝子は Odorant binding protein 57e であり、匂い物質結合タンパク質とでもいうべきものであった。ただし、この分子の機能に関しては現時点では確定的な説はなく、既存の説はすべて仮説の段階を出ない(例えば、匂い物質をレセプターへと運ぶトランスポーターであるといったものや、匂い物質のシグナルを調節する分子という説など)。
Odorant binding protein 57e (Obp57e) のエンハンサーをつかって GFP レポーターを発現するトランスジェニックを作ると、確かに匂い物質を認識する器官でのみ GFP が確認される。また、melanogaster において Obp57e を knockout すると、Morinda citrifolia の匂い物質 (hexanoic acid) を忌避しなくなり好むようになった。
Obp57e に隣接する Obp57d という遺伝子を knockout しても同様の表現型を得るが、Obp57e と Obp57d をその間のエンハンサーとともに knockout すると melanogaster の野生型と同様の表現型を示す。
整合性がとれていない結果もあるのだが、単一遺伝子座によって行動(好み)が変化しうるというのが面白かった。あるいはこんなのはすでにあたりまえだったりするのかもしれないけど。。。