Interchromosomal regulation of gene expression

  • Interchromosomal associations between alternatively expressed loci. Nature 435, 637-645 (2005)

予想はされていたがかなりショッキングな内容の論文が Nature に出てる。 T cell という白血球の一種は Helper type 1 と type 2 に分化することが知られている。このふたつの細胞種への分化の過程で、それぞれの type では発現する遺伝子が異なっている。このとき、Interferon-gamma が type 1 を決定し、Interleukin-4 が type 2 としての運命を与えている。これらの遺伝子の発現を制御している DNA 領域は11番染色体に乗っており、11番染色体の中ではそれぞれ細胞種特有の遺伝子発現を制御していることがわかっていたが、今回10番染色体に乗っている Interferone-gamma の発現制御をしていることが明らかになった。
他の染色体上の遺伝子へ発現制御を行いうる機構が発見されたのはこれが初めてのような気がする。
一応なぜこれがすごいかということについて補足。現在での DNA に関する理解というのは以下のようになる。遺伝子というのは細胞が生きていく上での道具であり、その道具のすべておよび道具の呼び出し方を含めたものがゲノムと考えられている。遺伝子は他の遺伝子と協調し合うことで大きな働きをなし(例えば傷口をふさぐとか)、ある特定の状況下において、状況に対応するために呼び出される遺伝子を規定している領域を制御領域と呼んでいる。
これまで、制御領域というのは基本的に制御される遺伝子のごく近傍にあると考えられており、その領域を調べればその遺伝子の発現制御がわかると見なされてきた。しかし、今回の論文によって制御領域が他の染色体上にもあることが示されてしまったため、遺伝子の使われた方具合を理解するためには、各遺伝子について染色体上すべての制御領域を考える必要がある可能性を示唆している。