morphogen gradient 生成システムの温度補償性 from 今日のジャーナルクラブ

  • Houchmandzadeh B, Wieschaus E, Leibler S. Establishment of developmental precision and proportions in the early Drosophila embryo. Nature. 2002 Feb 14;415(6873):798-802.
  • Lucchetta EM, Lee JH, Fu LA, Patel NH, Ismagilov RF. Dynamics of Drosophila embryonic patterning network perturbed in space and time using microfluidics. Nature. 2005 Apr 28;434(7037):1134-8.

Maternal に供給されている bicoid mRNA は Staufen タンパク質によって anterior 側にアンカーされている。そして、この bicoid タンパク質によって、 hunchback mRNA が転写されてくるのだが、この hunchback の発現レベルは正確な位置的なコントロールを受けている。bicoid タンパク質は比較的ブロード(核にして5個くらい)な個体差を持って発現の勾配が存在しているが、hunchback は1つ程度の誤差しかない。この精妙なコントロールは温度補償性があり、9−27度の範囲ではこの勾配形成に異常はみられない。この過程で Staufen タンパク質が重要な役割をになっており、 Staufen 変異体では hunchback 勾配の急激な変化の位置にずれが生じるようになる。

Embryo の anterior と posterior を別々に温度調節することのできる装置を開発して、前後軸にそって温度を変更しても、7度と27度という極端な変化のもとでさえ、正常発生と違いは見られなかった(この部分に関しては、発生速度の変化や、細胞形態のレベルでの解析がないため正常発生と断言できる状況にはないが)。しかし、前後方向の温度変化を周期的に行うことで、Staufen 変異体のような表現型があらわれた。温度補償をするためのシステムは存在しており、Staufen を介しているのだと思われるが、体の部分と全体を統合するためのシグナル制御系への理解はまだまだ暗中模索の状況。

S 先輩の表現は明確でわかりやすい。スライドもまとまっていて視覚効果十分。ああいうプレゼンを心がけて行きたい。