Customised zinc finger domain protein による site directed gene repair

Ctenophora2005-07-24

妙見先生より教えていただいた zinc finger protein を用いた遺伝子修復の話。同じ号のNature Articleは読んだ記憶がある。こっちは目を通したんだけど、そのまま通過していたみたいで記憶にない。
これまでの遺伝子治療の手法としては、変異遺伝子を相同組み換え(HR)を利用して編集することは原理的に*1不可能と考えられていたので、正常遺伝子をレトロウィルスベクターなどで導入して*2やる方法がメインだった。しかし、レトロウィルスの染色体への挿入部位には指向性がほとんどなく、クロマチン構造がほどけているところ*3に入りやすい傾向があった。つまり、その他の正常な遺伝子に対して insertional mutagenesis を起こす可能性が指摘されてきており、実際に必須遺伝子座に挿入されてしまった例もあるという話を以前理研BRCの三好先生に伺ったことがある。
Sangamo Therapeutics, Inc. | Pioneering Genetic Cures*4の研究グループのとった手法は、相同組み換え(HR) の確率を大幅に上昇させるもの。HR が起きるためには DNA 二重鎖の切断 (Double strand break, DSB) が起きることが条件になり、ここが律速段階らしい。
このグループは X 染色体に連鎖している免疫疾患の遺伝病 X-SCID の原因遺伝子である IL2Rgamma という遺伝子座の編集をターゲットとした。遺伝子治療用の元となる site directed DSB を引き起こす nuclease を設計する段階で、zinc finger からなる DNA 結合ドメインをいくつも連結した。それぞれの zinc finger domain は 3 DNA 塩基対を認識し、タンパク質に変異をいれてやることで認識する 3 塩基をデザインすることができるらしい。
DSB を引き起こしたい染色体 DNA 領域を認識するように 4 つの zinc finger domain を連結し、さらにこの DNA 認識ドメインに DNA 切断酵素である FokI nuclease を接続させることで DSB を引き起こす。イメージはこちらの図を参照されたい。
実際の効率として、薬剤耐性による selection を経ずして培養細胞の約 20% の遺伝子編集に成功しており、1万倍以上の効率改善を果たしている。
ただ、どのように zinc finger domain に変異をいれることで特定の 3 塩基対を認識するように zinc finger domain をデザインできるのかについて一般化した報告がないらしい。*5。Material and method を読めばある程度はわかるかもしれないけど。企業がバックアップしている研究である以上しょうがないかもしれない。
Gene Therapy, News and Commentary
Gene Therapy, Review
Highly efficient endogenous human gene correction using designed zinc-finger nucleases, the original paper

*1:相同組み換え Homologous recombination, HR 。HR の起こる確率は10万〜1000万分の1と低い

*2:Dominant negative mutation が染色体遺伝子に入っていたらアウト

*3:つまり、遺伝子発現が高いと予想される領域

*4:Zinc finger type の transcription factor の遺伝子工学で特定の転写因子の on/off 制御システムを開発しているみたい。どうやら製薬会社の研究部門が取引先みたいだけど。ちょっと自分の技術と知識がどう売れるのかについて知識をつけておいてもいいかな。

*5:おそらく特許がらみなんだろうけど...