ゲノム分化の起点

Ctenophora2005-06-08

  • Global divergence of microbial genome sequences mediated by propagating fronts. PNAS 102, 7332- (2005)

ちょっと重いんですが、バクテリアのゲノムの多様性を生みだしうる中立的な変異の安定化の機転となるものとして HGT (Horizontal Gene Transfer) の例などが出ている。読みなれない分野なのでどうも難しいが、内容は面白い。
もう少し丁寧に読んでみた。種の決定と、ゲノムの変化というのは不可分だと思われる。この種の決定を促すゲノムの変化の原因となりうるものとして、突然変異による塩基置換がある。その一方で、相同組み換えによってゲノムへの損傷や変異の修復が行われている。ゲノム変化は突然変異と相同組み換えによる安定化作用の比によって挙動が挙動が決定するという仮説をこの研究グループは採択している。
バクテリアの進化を考える上で、非常に重要な水平遺伝子転移 (Horizontal Gene Transfer, HGT) と呼ばれる現象がある。この現象は異なった種からのゲノム断片が他の種のゲノムに挿入しうるというもので、性を介さないでゲノムのやりとりがなされることを指す。
相同組み換えによるゲノムの安定性を覆すものとして、この HGT は塩基配列の欠損や挿入と同等に考えられている。その理由は、 HGT などによってゲノムに変化が入ると、HGT 断片に対応する相同染色体の部位がないためその近傍では相同組み換えによるゲノムの安定化が起こりにくくなり、この近傍に変異がたまっていくことが予想される。この変異の前線は、ゲノム上をすすむ波となって不可逆的にゲノムに変異をいれていくことが考えられる。
このグループは、以上の状況をシミュレーションで検証したうえで実際にバクテリアゲノムの比較を行って、そのようなゲノム上を進行する不安定性の波の通ったあとを示すゲノム配列の特徴を発見したとある。この具体的特徴については難しくてよくわからない。