骨ゼミ EMT, TGFbeta & Par6

YM さん担当で EMT (Epithelial to Mesenchymal Transition) のメカニズムに迫っている Science の論文紹介から。

  • Regulation of the polarity protein Par6 by TGFbeta receptors controls epithelial cell plasticity. Science 307, 1603- (2005)

上皮が上皮としての性質を失って、間充織様になることを EMT と呼ぶ。上皮というのは皮膚とか、消化管とかのように細胞のシートからなる構造のことをさしているが、その上皮を構成している細胞が、上皮としての一体性を失って遊走する細胞になることの話である。今のところ癌の転移メカニズムの一番有力な説明となっている。
これまで、上皮の細胞同士の接着を担っている構造として adherens juntion と tight junction があるということはわかっており、 adherens junction の破壊過程に関しては TGFbeta signal から slug などの zn-finger 型転写因子を介して発現抑制がかかることは知られていたが、 tight junction に関しては上流の関係が不明だった。

  • High-throughput mapping of a dynamic signaling network in mammalian cells. Science 307, 1621- (2005)

での TGFbeta シグナル伝達経路の因子と細胞極性因子の結合スクリーンにより、 TGFbeta receptor II と Par6 の結合がわかり、始めに挙げた論文へとつながっている。
ちなみに、このスクリーンは yeast two-hybrid の変形(レポーターはルシフェラーゼ)を mammalian cell でやっているところが独自。
Tight junction の話にもどると、 TGFbeta signal -> Par6 -> ubiqutin ligase (SMURF) -> RhoA degradation -> tight junction 崩壊という流れになっているよう。実験系はすべて NMuMG cell というマウスの乳房上皮由来らしい。