A/B & PCP interaction

  • The apical determinants aPKC and dPatj regulated Frizzled-dependent planar cell polarity in the Drosophila eye. Cell 121, 621-631 (2005)

Planar cell polarity (PCP, 平面細胞極性) は多細胞生物で広くみられる上皮細胞の性質であり、apical/basal (A/B, 頂端部/基底部)方向の極性とは直交して存在する極性である。PCP の決定因子の一つである Frizzled (Fz1) は apical 側への局在が、機能するために必須であるが A/B 極性と PCP の間の関係はほとんどわかっていない。

上皮のような構造をつくる細胞のシートの cadherin 接着に近い側が apical であり、基底膜に近い側を basal と呼び、この細胞の方向性(極性)を A/B 極性と呼ぶ。Apical 側に集積するタンパク質として Crumbs (Crb), Stardust (SdtI, PALS-1 Associated Tight Junction Protein (dPatj) などがあり、 Crb と Std の機能欠損では、 A/B 極性が崩壊することが知られているが、 dPatj は必要ないことがわかっている。さらに、 Bazooka, Par-6, aPKC 複合体も apical 側に局在し、A/B 極性に必須であることが知られている。また、cadherin の adherens junction よりも basal 側には Scribble (Scrib), Discs large (Dlg), Leathal giant larvae (Lgl) 複合体が存在し、これらの欠損では apical 側の因子の増大や上皮の過成長、規則性の崩れが観察される。
一方 PCP とは、 A/B 極性をもつ上皮の中で、 A/P 極性軸に直交する細胞の方向性のことであり、翅や体側の剛毛の生える方向や複眼の単位である ommatidia の方向性の決定に関与していると考えられている。Frizzled1 (Fz1), Dishevelled (Dsh), Strabismus (Stbm), Flamingo (Fmi), Diego (Dgo) などがこの PCP の決定に関わっている遺伝子名である。

Drosophila 複眼は中央線で鏡映対称であり、中央に向かって ommatidia の R3 細胞が位置し、 R4 が遠ざかる位置にくるようになっている。この R3/R4 の位置決定には Notch と Fz が関わっており、 Notch 活性があると R4 になり、 Fz は Notch を抑えている。

この論文では、 Fz 活性の制御に dPatj が関わっており、 Fz が aPKC を Fz の C 末に呼び込むことで Fz をリン酸化して不活性化させることが示唆されるデータが示されている。また、 Baz は aPKC を抑えることで Fz を活性化させており、これらの遺伝子の on/off は上述の ommatidia の性質に合致している。

A/B 極性と PCP を結ぶ発見はこれが初めてであり、異なる軸決定因子間の相互作用の性質を理解する上での足がかりができたようだ。