ウィルスを用いた神経系への遺伝子導入系

  • HSV trafficking and development of gene therapy vectors with applications in the nervous system. Gene Therapy 12, 891-901 (2005)

先日とあるところでどの程度までゲノム操作を用いた遺伝子治療が現時点で可能なのかというシリアスな質問を聞いていたところへ目にとまったレビュー記事。単純ヘルペスウィルスを弱毒化してやって複製能を失わせたウィルスベクターの開発と、単純ヘルペスの感染経路の解説等。
面白そうなのは、感染の機序がかなり詳細に調べられており、標的細胞の表面のどのタンパク質とウィルスのどのコートタンパク質が水素結合して、感染するかがわかっていること。さらにこの知見を元に、ウィルス側のコートタンパク質を改変してやることで、本来感染することのできない細胞にも感染できるようにウィルスゲノム変更ができているという点。
さらに、このヘルペスウィルスの神経細胞内での移動(レトログレードフローで核に到達してゲノムに挿入)、さらに樹状突起を媒介にして周辺の神経細胞へも移るという能力を利用して、外科的に到達が難しい神経細胞への遺伝子導入なども考えられているらしい。
ヘルペスならではの、ゲノムに挿入されたままいつか体調を崩したときに発症するという性質のを利用して、特定の代謝条件などで遺伝子が活性化するように組み込めるようにいつかなるかもしれない。レビューの筆者はこの文書の領域を逸脱するのでここでは論じないと書いていたけど、夢ではなさそう。