プローブ顕微鏡

いろいろ勉強になった。光顕の限界を超えようとするアプローチのひとつについて。走査プローブ顕微鏡 (Scanning Probe Microscopy, SPM) と正しくはいうらしい。で、そのうち走査トンネル顕微鏡 (Scanning Tunneling Microscopy, STM) と原子間力顕微鏡 (Atomic Force Microscopy, AFM) について。
原理としては SPM 一般に、探針 (Probe) と試料の間のなんらかの相互作用を用いて、この相互作用が一定となるように探針を試料上を走査していくことで像を形成するもの。 STM ではトンネル電流が、 AFM では原子間力が利用される。
探針と試料の相互作用を一定に保つことによって、試料表面の形状をなぞることができる。このときの探針の Z 方向の移動度と XY 平面での位置をデジタル化して保存する。 STM はその性質上、絶縁体試料に対しては応用が難しく、水中試料の走査ができないことから生体試料の走査には向かなかった。
一方 AFM では、原子間力を用いることによって、 STM の問題点を克服している。
探針 (Probe) の走査モードには大きく分けて 3 つの種類があり、それぞれ試料と常に接しているコンタクトモード、接しないノンコンタクトモード、探針が上下するタッピングモードがある。
初期の SPM ではコンタクトモードが採用されていたが、試料へのダメージおよび探針へのダメージがあるため、非接触のノンコンタクトモードおよびタッピングモードが開発された。
微分可能な曲面を構成するような試料に対してはノンコンタクトモードで十分であるが、微分不可能な曲面に対してはノンコンタクトモードでも探針と試料の接触が起きてしまうため、各点ごとの走査について探針を一度 Z 方向に引き上げるタッピングモードが有効とされている。なお、タッピングモードも非接触での走査を可能にしている。
解像度は nm 単位となっており、生体試料に対して光学顕微鏡での観察が不可能な分解能に迫ることができるの観測系と言える。
考えられる SPM の弱点として、相互作用を一定に保って走査する際に、組成の異なる試料の観察結果の評価が難しいのではないか、ということが上げられる。つまり、同一組成の試料の表面計測をする条件では、相互作用が一定の点を走査していけば、確かに目的の曲面データが得られることは疑いないが、もし、異なる組成から試料が構成されていた場合、組成ごとに相互作用は異なるはずで、探針の Z 方向の距離が相互作用の違いの差として現れる可能性がある。詳しく言うと、実際には平面を計測しているにも関わらず、異なる組成で構成される試料を走査すると、その組成の違いが現れる点あるいは線において、実際には存在しない凹凸を検出してしまうのではないか、という危惧である。
念頭にあるのは、細胞膜上を AFM で走査した場合、細胞膜上のタンパク質と脂質二重層は物理化学的な性質が異なるはずであり、当然ながら探針との間に生じる分子間力も異なってくると思われる。だから正しい曲面が得られないのではないか、ということ。オーダーの議論ができないので、定性的な話になってしまうが、実際どうなのか。教授は「そんなことが問題になるという話は聞いたことがないね」とおっしゃっていたので大丈夫らしい。