MHC and Odor through 目線

女性は、父親由来の MHC 遺伝子を元に、それと少しだけ似た男性の匂いを好む傾向にある、という論文。MHC 遺伝子は複数存在しており、ひとつの遺伝子の違いを女性は識別できるということも明らかになっている。
いくつもある MHC 遺伝子だが、ランダムに女性をピックアップして実験に参加してもらうと、MHC の多様性があまりにも大きいため、実験的にコントロールがとれない。そのため、生殖的に隔離されていて、その MHC の種類が網羅的に理解されているヒトの集団を用いた。男性の匂いサンプルは同一の集団および、その他のエリアから。
匂いサンプルは、何が匂いのもとなのかわからないように被験者である女性に提示され、その匂いを女性がどう感じるかを4つのクライテリアで評価してもらっている:familiarity, intensity, pleasantness and spiciness (訳が難しいが、親近感を覚える匂い、強烈な匂い、好きな匂い、?)
女性が匂いに pleasantness を覚えるのは、実験で焦点をあてていた 7 つの MHC 遺伝子のうち、ふたつが女性と男性であっていた場合であった。しかし、ひとつしかあっていない場合は least pleasant らしい。つまり、女性は単一の MHC の違いを検出しうる高感度な嗅覚を備えていることがわかった。男性にこういった能力があるかどうかはまったく本文中ではでてこない。また、この嗅覚的嗜好は生理周期に非依存であることも確認された。
次に、女性の MHC 遺伝子のどれが重要なのかを調べている。このとき、成長段階で女性は母親由来/父親由来の MHC をそれぞれもっており、遺伝しなかった親の MHC 由来の匂いに成長段階で接している。従って、女性の遺伝的な状態によって、匂いへの好みが決定されてきているのか、あるいは成長段階での両親から受けている MHC 匂いが記憶されているのかを区別したいというのが目的。
女性自身の MHC の母方/父方、遺伝しなかった母方/父方の MHC と、男性の匂いの MHC と好みの相関を three-factor repeated measures ANOVA で解析して、父方由来の MHC で女性が受け継いだものが相関することが明らかになった。
完全に一致でも、完全に不一致でもだめで、少しだけ一致しているのがいい、というのは面白いけど、

Consistent with earlier studies, these data indicate that there is not one most preferred human male odor for everyone, but that odor preference is relative, based in this case on the degree of HLC differences between a man and a woman.

という結びで終わっている。
この MHC と好みはいろいろと面白い考察がなされているのでそのうち追記。
Paternally inherited HLA alleles are associated with women's choice of male odor. Nature genetics article
Wisdom through immunogenetics. News and views の解説
HLA and Mate Choice in Humans これがヒトでの最初の報告